黒曜の戦場


彼の顔も見えなければ、逆にいつもの咲くんの香りに段々と安心感が増してきて……。

柔らかく頭を撫でてくれるのがもう……蕩けてしまいそうで。



咲くんの肩、いいなぁ。

本当に眠っちゃえそうだ……。

気持ちがよくて思わず擦り寄ると、咲くんが一瞬ピクッと強ばる。



「琥珀ちゃん」

「……はい?」

「他の男にはこう、擦り寄らないように。心をすぐ許しちゃダメだからね?食べられちゃう」

「琥珀、食べられたくないけど、咲くんまでカニバで……?」

「いや、カニバじゃなくて、ね」



そう、以前から喰うだなんだと人に向けて話されていた気がする。

主にそれはいおくんが言っていたから、まさか咲くんまでカニバのご趣味が……!?なんて思ってしまったのだけれど。



彼はその時、琥珀の首裏に手を回したまま背のシートを倒したのである。

頭を預けていた琥珀も一緒に倒れるけれど、咲くんの手に支えられたので頭に衝撃は受けなくて済んだ。

けれど。



ぽすっと一緒に倒れる咲くんが、上から琥珀を見下ろしていた。

見上げれば、優しく微笑む王子様。



首の裏を優しく撫でられ、くすぐったくてピクっと反応してしまう。
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