黒曜の戦場


「そういや、未夜話したって?家出のこと」



席の近くの本棚から漫画を取り出してパラパラとめくるリンくん。



未夜くん……そう、未夜くんだ、未夜くんのこともあった。

リンくんは未夜くんを黒曜に来る前から知っていたはずで、どんな状況かもわからなくても気付いて、助けられるように動いてくれて。

それにお洋服とかも貸していて。



あの時話してくれた未夜くんを思い出して、思わず涙腺が痛くなってくる琥珀。

『家族』に責められるって、どうしてそんなことになってしまうんだろう。

あんなに優しい、未夜くんに……。



「……リンくんがいてくれて、よかった」

「は?」

「琥珀は、細かいことなんて全然知らないけど、でも……家族が怖くなるってよっぽどの事だと思う」



鼻の奥も、つんとする。

今でもあの話にどう返せば、未夜くんの心が楽になるかなんてわからない。

どう支えればいいのかなんてのもわからない。



でもやっぱり、寂しい時は琥珀、たくさんパパンにもママンにも一緒にいてもらってたから。

それで琥珀は安心していたから。



「未夜くんも寂しくなっちゃわないように、一緒にいられる時に一緒にいることくらいしか、琥珀は思いつかないや」



それでいいのかなんてわからない。

もっと色んな経験をしていたら、なにかしら正解がわかるのかもしれない。

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