黒曜の戦場
「私達ずっと体育館の方探しちゃってて、黒曜のみんなも教室付近とか探してくれてたんだけど、まさかこんなところだと思わなくて」
このトイレは教室から遠く、体育館の近くといえどあまり人が立ち寄らない。
「ううん、ありがとうみっちょん、いおりさん……咲くん、も」
ちょっぴり、ちょっぴりだけ不安だった。
最悪、放課後まで待たないと誰も通りかからないかと思っていたし、窓から外に声をかけるか扉に声をかけるかでも迷っていた。
そしたら琥珀の空腹が限界を迎えちゃうことだっただろう。
窓か、廊下か、どちらが人の通る確立が高いだろうか?
でも扉だと私の姿が見えない分、気付かれないんじゃないだろうか。
登下校で使われる道路も、昼休みは人通りが少なくて。
「琥珀ちゃん、何もなくてよかった」
ぽんぽん、優しく頭を撫ででくれる咲くんの手のひらに、また心が緩んでいく。
思っていたより、体はがちがちに固まっていて。
みんなを見たら疲れがどっと襲ってきた。
三人の後ろから、白髪くんも現れる。
どうやら彼も来てくれたらしい。
「助かった、ハクト。お前の遅刻癖が役に立つ日が来るとは思ってなかったぜ」