黒曜の戦場
「本当は閉じ込められた時、どう思ってたの?」
彼は閉じ込めて忘れようとする琥珀の気持ちを、掘り返す。
「た、楽しくない話だよ」
「楽しくなくていい。大事な琥珀の気持ちだよ」
「……嫌われたくない」
「嫌うはずない。琥珀はどれだけ俺が琥珀のこと想ってるのか、知らないからそう思うんだよ」
想ってる、と、言われても。
「咲くんがなんで、そんなに琥珀に良くしてくれているのか、琥珀にはわかんない」
琥珀は知らないことばかりだ。
世間知らずだ、箱入り娘?だったし、頭悪いし、人の気持ちもよくわからないし、美術部に入らないって言っただけで美術部の子から目の敵にされた理由も解らない。
「わからないは、怖い」
わからないは、怖いことばっかりだ。
ただひとつ、琥珀が笑っているとみんなが笑っていてくれる。
たまにダメな時もあるけど、それが一番、わかりやすくみんなが琥珀に良くしてくれる方法で。
でも今、咲くんは笑ってくれない。
いつも笑ってくれている咲くんが笑ってくれなくて、琥珀はどんどん不安になっていく。