黒曜の戦場


琥珀も、咲くんの首に腕を回す。

こうしていると、だんだんとおちついてくるのがわかった。

じわじわ、じわじわ、暖かい咲くんの心が染み込んでくるみたい。



「絵を描けなくなった時も、すごく怖くて、不安で。自分の一部がなくなっちゃうんじゃないかって怖かったけど。みっちょんが励ましてくれて」

「うん」

「家出中らしいの、琥珀の感性。でもそのうちきっと、戻ってきてくれるって」



信じたい、信じてる、今はまだどうなるかわからなくても。



「黒曜で、楽しいを積んで、スキルを積んで、そしたら戻ってきてくれるかなぁ」

「あんまり根詰めないで、戻ってきてくれた時の分の余裕も空けておかないとだね」

「そっかぁ……」



余裕、余裕が必要なんだ。

琥珀ちょっと、色々といっぱいいっぱいになっていて、でもそれを他の人にはバレないようにって隠して笑っていて。

でもそれじゃ、いつまで経っても余裕がないままなんだ。



ぎゅっと咲くんを抱きしめたら、優しく抱きしめ返してくれた。

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