黒曜の戦場
「咲くん」
「うん?」
「お話聞いてくれて、ありがと。離れないでくれて、ありがと」
絶対こんな琥珀、めんどくさいのに、ちゃんと話を聞いてくれて、抱きしめてあやしてくれて。
ぽんぽん、優しく頭を撫でてくれるその手に、また涙が溢れてきた。
琥珀もいっぱいいっぱいで、咲くんの話、ちゃんと聞けてなかった気がする。
なんかいろいろ、引っかかる言葉があった気がするけれど、琥珀の気持ちがいっぱいいっぱいに溢れ出して来て、掬い取れなかった気がする。
たくさんたくさん、これまで助けてくれた咲くん。
お話を聞いてくれた咲くん。
大きく深呼吸をひとつしてから、琥珀は咲くんにもたれていた体を起こした。
「ありがと、咲くん。お話したら少し楽になった気がする」
きっと、こうしてお話することって大事なんだと思う。
溜め込んで、我慢して、いっぱいいっぱいになって、でもそれじゃあ気付かないふりして、見て見ぬふりして、目を逸らしているだけ。
そんないっぱいいっぱいの気持ちの中に、家出中の感性ちゃんが戻ってくる隙間なんて、きっと出来ないんだ。