黒曜の戦場



いおりは小学校の頃、近所に住んでいた。

学校も登校班も一緒で、趣味も似通っていた。



「みつはー、俺描いて」

「……今度はなんのポーズしたくなったわけ?」

「シャチホコ」



そう言って早めの中二病を発症していたいおは、家に入ってきて畳にスライディングうつ伏せしてきた。

そのまま背中を逸らしたポーズを見せ付ける。



うわ、足の裏くっろ。



「靴下脱いでってば」

「えー」

「足の裏黒い!どうやったらそんなに黒くなるの!」

「サッカーしてただけだぜ?」



そのサッカーで明らかに砂まみれになったんじゃない!!

ぽいぽいっと靴下を雑に脱いで再びうつ伏せで寝転ぶいおに、私はペンと画用紙を用意して彼を描き始める。



そのポーズのまま何分耐えられるか見物ね。




「まだ?」



苦しそうないおの声に、限界を悟るけれど。



「まだ」

「ヴッ」

「反りすぎなんじゃない?」

「はやぐ描け……」

「命令ばっかじゃ女の子に嫌われるんだからね」



小学生でスケッチもそこまで早くうまく描けるはずもなく、急いで描いたいおは、雑になった。
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