黒曜の戦場


「……人によるんじゃない?」



自分だって多少強引な所もあるしだし、命令するのだ。

これを嫌ってしまったら自分を全否定することになる。

生意気だという自覚は一応、あるのだから。



「人による、か」

「人のこと言えないからね。まぁ私より弱いのはごめんだろうけど」



ふぅ、と一息つく。

すぐ諦めたり放棄したり卑下したり、そういう弱い人って苦手なのよ私。



手を止めて見上げると、いつの間にポーズをやめて立っていたのか、いおが私のすぐ前に立っていた。



「強ぇ奴ならいーのかよ?」

「……心がね」

「へぇ。どうなんだろうなァ」



なにが……と言いたかった唇に近付いてくるいおの顔。

何する気だ……と固まっていれば、迷いなく塞がれる唇。

呼吸が、止まった。



「……ん!?」



しかも長くて、調子に乗ったいおは唇をはむはむ、動かしてくる。

ちょ、まってなに急に!?

そう思い頭を引こうとするも、首の裏に回った手に逃げ場を無くされる。



ていうかこいつまさか、こういうのに慣れてない?
< 373 / 505 >

この作品をシェア

pagetop