黒曜の戦場


「絵、描ける人?」



画材の入った袋をちらりと確認されて、その意味を理解する。



「……は、はい、描いてます、いっぱい描いてます」

「じゃあ、この手も大事なお手手だね」



なんだなんだなんだなんだ、この展開の読めないパターン5は!?

助けて貰えてるのかちょっとよく分からない場面だけれど恐らく助けてくれている。

今日だけで一万円近く散財してきた画材たちの重みが、ずしりと重みを増した気がした。
(そもそも重い)



私の腕を掴んでいたゴツい男の人の手が、ぽろりと落とされる。

思いの他あっさりと開放された腕に、拍子抜けしてしまった。

この助けてくれている人(?)は、この人の知り合いなのだろうか?



「ねぇ、たくさん買ってるみたいだけど、絵、そんなに描くの?幅広く出来たりする?」

「え……っと、でも水彩とか切り絵とかそんなもんですけど……」

「切り絵?」

「はい」



切り絵に多大な反応を示され、急にその人に両手で頬を掴まれ、顔を上げさせられた。

それはもう甘く誘惑的なご尊顔が視界いっぱいに広がる。

肌ツヤ良っっっ!!

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