黒曜の戦場


どれもこれも女の人の声で、そこから咲くんの声は聞こえて来ない。

けれど、なんだか。



みっちょんが琥珀を見る。



「琥珀?」



琥珀は、琥珀の気持ちがよくわからない。

咲くんの気持ちもよく、わからない。

だけど。



あれはなんだか、心がざわざわとして、嫌だ。



「みっちょん、戻ろ」



もてもて?ってやつだ。

咲くんはもてもてってやつなんだ。

黒曜のみんなの中にいる時とも、なんだか違って見える。



咲くんが何を見ていたのなんかわからない、何を考えているのか、声を出したのか、誰かのその問いにあの柔らかい表情で応えたのか……そんなのわからなくて。

琥珀の想像だけが膨らんでしまっている。



じゃあなんで琥珀にあんなことしたの?

なんで琥珀だったの?

琥珀じゃなくても、咲くんはたくさん、選べる人がいるんじゃないの?

琥珀の絵が咲くんに何を与えたっていうの?

琥珀の絵で何が変わるというの?

琥珀の――



「琥珀っ」



みっちょんの声がして、気付けばみっちょんが琥珀の両頬に手を当てて顔を上げさせていた。

気付けば教室に戻って来ていて。

< 413 / 505 >

この作品をシェア

pagetop