黒曜の戦場


琥珀に触れてたのもそんな、慣れている延長線上なんだろうか、とか。



ちぅくらいじゃ、咲くんの気持ちは――。



「アンタの気持ちはどうなのよ」



琥珀の妄想の横から入ってくる、そんなみっちょんの声。



「アンタは何を思って、何から目を反らしてんのよ」



咲くんの気持ちが知りたい。

でもそれを知る勇気は琥珀にはない。

琥珀の気持ちはわからない。

なんで琥珀は琥珀の気持ちがわからないのか、わからない。



ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ。

どろどろとした黒い感情に飲み込まれそうで、それからひたすら逃げていたい。



「琥珀は……楽しく過ごしたいだけ」

「現実逃避よ、それ」



みっちょんの言葉がグサグサ、グサグサ痛い。

思っていることははっきり言うタイプだ、みっちょんは。

琥珀のことを思ってくれてるからこそ痛い、それはわかる、わかるけど。



「琥珀はみっちょんほど強くいられない」

「琥珀っ」



琥珀は逃げ出した。教室から駆け出して逃げた。

突き放した、拒絶した、向き合えなかった。

向かう先は保健室。
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