黒曜の戦場
琥珀から見た咲くんはいつも綺麗で、麗しくて、美しい。
冷静沈着で、不良さんたちのボスで、漫画の原作なんて書いちゃってる、すごい人。
それが神格化というなら、これを押し付ける琥珀もなんか、違うとも思う……。
「琥珀が俺の事を知りたいと思ってくれてるなら、俺は嬉しいよ」
「……知りたい、けど、ちょっと怖い」
「怖い?」
「…………なんか、壊れちゃいそうで」
そうやって琥珀はいつもいつも、自分を守ってばかり。
わかってる、琥珀は弱いこと。
みっちょんだってそういう所……言ってたんだと思う。
「壊れちゃうかぁ」
「わ、わかんないけど」
「琥珀が俺の事どう見てるか、なんか少しわかるよ。でもね、俺そんなに凄くないし、自信だってないんだ」
その手が、琥珀の手を優しく包み込む。
胸がきゅっと、締め付けられて。
怖さと、安心の狭間で、琥珀の気持ちは行ったり来たりする。
「咲くんが、自信ない……?」
「自信があったら、あんな奪い取るようなキスしないよ」
「……っ!!!」
キス……咲くんからキスって、言った。
それはやっぱり、事故みたいなものではなかったということで……。