黒曜の戦場
本当に咲くんから声が出たの?ってくらい、それは低くて。
一瞬であのブラック咲くんのような低い声が……私にかけられた。
「いおりが?誰に」
そこで琥珀は、盛大に勘違いさせてしまっていることにようやく気付いて、肩をびくーーーんっと跳ねさせた。
「ごめんっちがっちがうっ!いおくんが私にっ」
どんどん保健室の空気が冷めていく。
にじり寄ってくる咲くんの目はガンっと開いていて、涙ちょちょ切れ状態で私は必死に説明した。
「咲くんのことを!こ、琥珀にそう言って……」
すると、咲くんが怖い顔のままピタリと止まり、少し視線を宙に向ける。
「俺が琥珀に欲情してるって?」
「……そ、そう。……いやっ!そんなことないって、言ったんだけど、言ったけどね!?」
じっとりとした視線を向けてくる咲くんに一生懸命説明するも、うまく伝えられている気がしない。
あの咲くんに笑顔が戻らない。
いや、怒っている声でニコニコ笑ってても怖いんだけど、真顔になられるのもなんか怖い!!!
「いおりが琥珀に欲情したって話ではないんだよね?」
「断じて違います!!!」
「俺が琥珀に、か……。間違ってはいないよ」