黒曜の戦場


そういう、選択肢は与えられなかった。

でもそれを聞かれても琥珀は、どうしたらいいのか分からなくなっていたと思う。



「咲さん、待つ気でいるんじゃないかしら。琥珀の気持ちが追いつくまで」

「追いつくまで?」

「琥珀が自分の中で、答えを見つけるまで。時間をくれたんじゃないかしら」



琥珀が、答えを見つけるまで……?



「もちろん、そうばっかりだとは限らないけれど。黒曜のことや漫画のこともあって忙しいのかもしれないし、どっちにしろ今はまだ考えてていいのよ、琥珀は」

「……うん、そうかな?」



そっか……そっかぁ。

ほっとしたと同時に、なんだか寂しい気持ちが胸に広がる。

咲くんが琥珀のこと好きでいてくれてるんだって……あたたかい気持ちも。

とくとく、心が満たされていく。



「琥珀は答え、みつけられるのかな」

「咲さんのことどう思ってるのか、琥珀は彼氏が欲しいのか、他の人に咲さん取られたらどう思うのか。ゆっくり考えな」



姉御肌なみっちょんはそう言ってふふっと笑ってくれた。

今度は琥珀がどう考えているのか、自分と向き合わないとなんだね……。

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