黒曜の戦場
近付いてくるいおくんの眼中には、本当に琥珀なんて映っていなそうで。
人一人分の距離を空けて、みっちょんの目の前に立ったいおくん。
「昨日手をとってキスしたこと怒ってんのかよ」
そんなことしてたのっ……!!?
琥珀はお口をチャックして、みっちょんとは反対方向を向く。
少々気まずい……。
琥珀は今空気です、空気なのです、ぎゅっと握られた手からも逃げられないのです……!!!
大事な場面じゃない?
いいの?琥珀ここにいて本当にいいの?
「……アレは……ビックリしたから……」
「ビックリしてその手でビンタしてきたのかよ。可愛い奴め」
「かわっ…………とか、私に似合わないから」
「お前の画力がさらに上がった手が愛おしくてな。わりぃ」
「そ、それ!謝る気本当にあるの!?」
「手だけじゃねぇよ、ミツハ」
「……っ」
「いつになったらお前、俺のガチな気持ちに気付いてくれんの」
琥珀とみっちょんを繋ぐ手を見詰めて、いおくんがまた口を開く。
「いつになったら、俺の手取ってくれんの」
そう言ってみっちょんの顔を覗き込むいおくん。
甘い、なんだかすごく琥珀まで暑くなってきた。