黒曜の戦場


もう怖い状況とか、得体の知れない人だとか、どこに反応するのか意味が解らないことだらけで、頭の中がさすがにパニックだ。



「切り絵ってカッター使うよね?」

「……は、はい、デザインカッターを……」



ちなみにそのカッターの刃なら、この買い物袋の中にも入っているけれど……ちょっと武器にしては弱すぎる。

いや、刺さったら切れ味は凄いけれども。



「よし」



なにが。



「助けてあげるかわりについておいで」



一瞬その意味を理解出来なくて、私は思考を止めたけれど。

その人は私の返事なんて待つこともなく、ガラの悪い男を冷たくひと睨みすると、今度はにこやかにバイバイと手を振っていた。

あれ、一瞬人を殺ってそうな顔した気がするのは気のせいなのかな?見間違えかな?

背筋がゾクゾクと痺れるように震えたけれど、気のせいかな?

ガラ悪男はコクコクコクと無言で頷くとあっさりと逃げていき……今度は私の肩に、その助けてくれた人の腕が回され、導かれていく。



え……助けてくれた、ん、だよね……??
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