黒曜の戦場


「ぺんてく……?」

「さすがにペンテクは未経験か」



雨林さんからの指示を受けようとするも、もう粗方の下描きは終えているようで。

私の前に立ちはだかっていたのは、ペン入れの作業のことだった。

漫画のペン入れなんて、生まれてこの方したことがない。



丸ペンやGペンやスクールペンなんていう名称は、画材として存在は知っていたけれど、漫画は描いたこともないし、経験もない。

つけペンを使うには慣れていないと、シャーペンなんかとは全然感覚が違うらしい。



定規を使うこともあるし、ヘタしたらインクべちゃり事件が私にも発生する可能性がある。

なにそれ怖い。

複数人で仕上げていく他人の原稿にペン入れ怖い。



「この〆切を乗り越えた後で使い物になるように詰め込んでやる」

「お、お手柔らかに……」



琥珀ちゃんは褒められて伸びるタイプなので、たくさん褒めながら指導して欲しいと希望します。

というか、これは今後の私も採用されてしまうのが決まっておられるご様子で。

嬉しいやら怖いやら複雑な心境です……。

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