黒曜の戦場
7.徹夜は記憶力落とすんですよ?
丁寧に説明を受けたものの、今日の所の私の作業はスクリーントーンを切って貼ってくり抜くをひたすらすることだった。
そう雨林さんからの指示だ。
あと、たまに消しゴムかけが甘い所があるから、追加で消し消し。
フランスくんたち、頑張ってくれ。
黒は印刷に残ってしまうじゃないか。けしけし。
それから同じ服の人の柄をひたすら切って貼って切って貼って――。
「五時ですよー?」
耳元でそんな声が聞こえて来て、私はハッとしてそちらを向く。
目の前一杯に咲くんの麗しい顔が広がり、ガタッと椅子から転げ落ちそうになった。近い!!
ガチヤンキー・いおりさんぶっ倒れ事件の時に次いで二度目である。
「わ、気を付けて」
ふわり素早く私の腰を支えてくれる咲くん王子……。
きゅん。
といっても今落ちそうになった原因も咲くんなんだけれども。
「ご、ごめんなさい」
「驚かせちゃったかな」
すごく集中していたから、もう夕方なんて、そんなに時間が経っていたのかとびっくりしてしまった。
というか、咲くんの気配に気付かなかった……。