ユーサネイジア ー安楽死ー


すると、ワタシのエプロンを引っ張った善がワタシに縋りながら聞いてくる。



「ママ、お兄ちゃん悪い人なの?」

「……いいえ。前科は付いていません」

「じゃあ!善、お兄ちゃんとお話してみたいっ!!」



この子は……この不良の典型ともいえる姿を見てもなお、興味を惹かれてしまっているのか……?

こういう時の対処は知らされていない。



『緊急連絡、本部宛、至急確認したいことがあります』



ワタシは本部へと回線を繋ぎ、応答を待った。



『こちら本部。トラブルですか?』

『ひとつ前のペアリングである宵が、家の前に来ています』

『……なに?』

『デートを要求されました。善が興味を示して今にも玄関を開いてしまいそうです。対処方法を要求します』

『……ついに家まで突き止めたのか!!』



ペアリングを終えて数年、ギフトをずっと届けられていた本部では、宵は既に有名であった。

ストーカーのような並々ならぬ執着心をアンドロイドに抱いていると。

嫌悪も恐怖も感じないアンドロイドに、ストーカーという認識なんてものはみじんも解らないけれど。

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