ユーサネイジア ー安楽死ー
アンドロイドには、もちろん感情なんてものは無い。
しかし、時折その感情に反応することがある。
ズキッと痛むはずのない痛みを感じる。
そういう時、感情を揺さぶられているのは……提供者の人間だ。
「ママ?」
「……後悔、しない選択肢を選べとのことです」
ぶわりとした強い想いが、提供者から送られてくる。
「『私のように』」
「……提供者か?」
「……あの人は、私に残りの人生を預けたことを後悔はしていません。それが、残酷な選択の元だと言うことも理解しています」
いうなれば、彼女が体を自ら提供したということは──そういうことだ。
「あなたは、ワタシを選んでも後悔しませんか?」
「するわけないだろ!俺は……誰よりも日葵と一緒に居たいんだよ」
ギュッと強く、手を握られる。
いつの間にこんなに力強く成長していたのだろうか。
「……あなたが後悔しないというのなら、あなたの要求を聞き入れます」
オドオドとこちらを伺っている善を腕の中に招き入れ、一緒に宵を見つめる。
それに苦笑を浮かべる宵だけれど、次の瞬間、ワタシたち二人を包み込むように腕を回した。
「日葵、結婚しよ」
残酷で、けれど幸福を求める願いを、ワタシは受け入れた。