義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
『ぼたん、この家から離れて全寮制の女子高に行ってみないか。お母さんと長く暮らしたこの家にいるのはつらいんじゃないか?』
義父は葬儀の後、気づかわしげに言った。
義父からすれば、愛情で繋がった私の母はもういない。残された私は、正直厄介だっただろう。それでも生来気の優しい義父は、幼い頃からのよしみもあってか提案してくれた。
『名門校だよ。付属の女子大もある。環境のいいところで心を休めてみないかい。就職は天ケ瀬グループのどこでも、ぼたんの希望通りにしよう』
『お父さんありがとうございます』
私は義父の温情あふれる言葉に頭を下げた。行き場のない自分にはありがたすぎる提案だった。
このままここにいても、居場所はない。丞一は私を嫌っているし、親戚の目も痛い。
私は金沢の女子高に進むことを決めた。
新天地では、いい環境で友人に恵まれ楽しい時間を過ごすことができた。付属の女子大に進学し、七年間を金沢の地で過ごした。
その間、東京の天ケ瀬家に戻ったのは母の一周忌と三回忌の法要のみ。
その時も義父とは話したが、義兄は近づいてもこなかった。親戚の目もあり、逃げるように金沢に戻ったのを覚えている。
卒業後の進路は、天ケ瀬グループではなく自分自身で決めた。
義父は学費を出し、月々充分なお小遣いも送金してくれた。様子をうかがうメールはしょっちゅう来たし、実子のように大事にしてもらえた。
ここまで世話になったのだ。もう独り立ちしよう。
天ケ瀬家の親類縁者には叔母夫妻をはじめ、私をよく思わない人間も多い。これからは関わらずひとりで生きていこう。
場合によっては、籍も天ケ瀬家から抜いて母の旧姓である倉本にもどしてもいい。
都内の輸入食品を扱う小さな専門商社に内定をもらい、独立をいつ義父に相談しようかと思っていたときだった。
天ケ瀬丞一が私のもとを訪ねてきたのだ。
同居という確定事項を持って。
***
義父は葬儀の後、気づかわしげに言った。
義父からすれば、愛情で繋がった私の母はもういない。残された私は、正直厄介だっただろう。それでも生来気の優しい義父は、幼い頃からのよしみもあってか提案してくれた。
『名門校だよ。付属の女子大もある。環境のいいところで心を休めてみないかい。就職は天ケ瀬グループのどこでも、ぼたんの希望通りにしよう』
『お父さんありがとうございます』
私は義父の温情あふれる言葉に頭を下げた。行き場のない自分にはありがたすぎる提案だった。
このままここにいても、居場所はない。丞一は私を嫌っているし、親戚の目も痛い。
私は金沢の女子高に進むことを決めた。
新天地では、いい環境で友人に恵まれ楽しい時間を過ごすことができた。付属の女子大に進学し、七年間を金沢の地で過ごした。
その間、東京の天ケ瀬家に戻ったのは母の一周忌と三回忌の法要のみ。
その時も義父とは話したが、義兄は近づいてもこなかった。親戚の目もあり、逃げるように金沢に戻ったのを覚えている。
卒業後の進路は、天ケ瀬グループではなく自分自身で決めた。
義父は学費を出し、月々充分なお小遣いも送金してくれた。様子をうかがうメールはしょっちゅう来たし、実子のように大事にしてもらえた。
ここまで世話になったのだ。もう独り立ちしよう。
天ケ瀬家の親類縁者には叔母夫妻をはじめ、私をよく思わない人間も多い。これからは関わらずひとりで生きていこう。
場合によっては、籍も天ケ瀬家から抜いて母の旧姓である倉本にもどしてもいい。
都内の輸入食品を扱う小さな専門商社に内定をもらい、独立をいつ義父に相談しようかと思っていたときだった。
天ケ瀬丞一が私のもとを訪ねてきたのだ。
同居という確定事項を持って。
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