義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
親戚の多い天ケ瀬家において、後継者が丞一一択であることを不安視する声は昔からあった。
特に叔母の原賀夫妻は、長男の雄太郎さんを義父の養子にしたいと声高に主張していた。『丞一に何かあったとき、後継者の代わりは必要でしょう。雄太郎にお兄さんの傍で帝王学を学ばせてちょうだい。天ケ瀬のためよ』そんな主張をしていたのを覚えている。
雄太郎さんは義兄のひとつ上。
叔母の主張もあって原賀夫妻が任されている子会社ではなく、天ケ瀬本社に入社しているはず。
義兄を出し抜いて後継者指名されたいという目論見があったのだろう。雄太郎さんは天ケ瀬家の前トップの孫であり、資格がないとは言い切れない立場だった。
今回の義兄の重役就任を聞いて、叔母夫妻はさぞ歯噛みしたに違いない。
これで義兄が雄太郎さんより抜きんでたことになるのだから。
「わからないか?」
そんなふうに聞かれ、私は首をひねった。
「俺はもう一般社員じゃない。社長令息という肩書だけでもない。表向きにも、天ケ瀬グループの後継者だ。天ケ瀬家の次期当主だ」
「うん、お兄ちゃん。本当におめでとう」
義兄は私の祝福に、ふっと顔をゆがめて苦笑いのような表情になる。
「これでもう、誰にもおまえやすみれさんを天ケ瀬の人間じゃないなどと言わせない」
「お兄ちゃん?」
それは、どういう意味?
私と母が天ケ瀬の人間になったことを、疎ましく思っていたのは義兄だったはず。
義兄はそれ以上語らず、私に食事を促した。そこからはほとんど会話もなく食事は進み、夕餉は終わったのだった。
特に叔母の原賀夫妻は、長男の雄太郎さんを義父の養子にしたいと声高に主張していた。『丞一に何かあったとき、後継者の代わりは必要でしょう。雄太郎にお兄さんの傍で帝王学を学ばせてちょうだい。天ケ瀬のためよ』そんな主張をしていたのを覚えている。
雄太郎さんは義兄のひとつ上。
叔母の主張もあって原賀夫妻が任されている子会社ではなく、天ケ瀬本社に入社しているはず。
義兄を出し抜いて後継者指名されたいという目論見があったのだろう。雄太郎さんは天ケ瀬家の前トップの孫であり、資格がないとは言い切れない立場だった。
今回の義兄の重役就任を聞いて、叔母夫妻はさぞ歯噛みしたに違いない。
これで義兄が雄太郎さんより抜きんでたことになるのだから。
「わからないか?」
そんなふうに聞かれ、私は首をひねった。
「俺はもう一般社員じゃない。社長令息という肩書だけでもない。表向きにも、天ケ瀬グループの後継者だ。天ケ瀬家の次期当主だ」
「うん、お兄ちゃん。本当におめでとう」
義兄は私の祝福に、ふっと顔をゆがめて苦笑いのような表情になる。
「これでもう、誰にもおまえやすみれさんを天ケ瀬の人間じゃないなどと言わせない」
「お兄ちゃん?」
それは、どういう意味?
私と母が天ケ瀬の人間になったことを、疎ましく思っていたのは義兄だったはず。
義兄はそれ以上語らず、私に食事を促した。そこからはほとんど会話もなく食事は進み、夕餉は終わったのだった。