義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
新居で初めてのシャワーを浴び、先に寝室に入った。義兄がその後にシャワーを浴びている音が聞こえた。22時半、同居初日の夜。
私はベッドに仰向けになり、もやもやした気持ちのままでいる。

義兄はさっき何を言おうとしたのだろう。
長く私を避けていた義兄。今だって優しい雰囲気ではないけれど、先ほど夕食時に見せた真剣な表情が気になる。

新しいベッドのシーツはのりがきいていて、少し違和感がある。ごろりと寝返りを打ってみて、悶々と考える。
もしかして、兄は思ったより私を嫌悪はしていないのかもしれない。家族だと、不器用ながら示してくれているのかもしれない。

「私の被害妄想だったのかな」

確かにあの頃の義兄は冷たかった。ほとんど無視されて、胸を痛めたのは間違いない。
だけど、私も義兄も大人になったのだ。
もし、当時本当にわだかまりがあったとしても、義兄は今私を家族として認めてくれているのかもしれない。さきほどの発言はそうともとれる。

「それに、嫌いな人と同居するなら、あんな言い方しないよね」

少しだけ勇気が湧いてきた。
私はベッドから起き上がり、私室を出た。シャワー音は止んでいる。兄は部屋だろうか。おやすみの挨拶くらいはしてもいいかもしれない。
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