義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
その日は定時に上がり帰宅した。買い物は近くのスーパーで済ませ、日用品を買い足す。夕食は義兄が遅いというので、お弁当を買ってきた。

「ふたり暮らしかあ」

こうしてひとりでいるとまだ実感がない。高層階の大きな窓から見える皇居や都心の灯りは明らかに非日常感があって、義兄と同居という事実をいっそうファンタジーに感じさせる。

しかも、私を妻にだなんて、義兄は何を考えているのだろう。
今朝はあまり話す時間がなかったけれど、この先どんな顔で接していけばいいかわからない。

その晩、日付が変わった頃に義兄は帰宅した。私はまだ起きていたものの、出迎えはせずに寝たふりを決め込んでしまった。
卑怯かもしれない。だけど、昨晩のことを思い出すと、夜に顔を合わせるのは避けた方がいいような気がしてしまったのだ。


翌朝、私は早々に起きだして、コーヒーメーカーをセットする。コーヒーしか飲まないというなら用意してあげたい。昨晩避けてしまった罪悪感のような気持ちもあった。
パンをトーストし、目玉焼きを焼いているところに義兄が起きてきた。

「おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう。早いな」
「コーヒー、できてるから」

あまり目を合わせずに忙しくキッチンを動き回っていると、いつの間にか背後に義兄がいた。
私の背に密着しながら、腕をのばしコーヒーメーカーとマグを手に取る。
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