義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
私は慌てて身をひるがえし、義兄と距離を取った。

「そんなに警戒するな。朝からその気になっていたら、お互い遅刻だろ。何もしない」
「べっ、つに! 邪魔かなって、思ったからどいただけで!」

義兄はコーヒーを手にダイニングテーブルへ戻っていく。表情はどこか優しく見える。

「少なくとも、俺を男と意識してくれているみたいだな」
「意識とか……そういうことじゃなくて」

意識なら初恋を自覚した頃からずっとしている。
避けられていた時期と、ほとんど会わなかった時期がある上に、初日のキスが尾を引いている。そのせいか、どうしても義兄の顔をまっすぐ見られないだけ。
とはいえ、これ以上妙な態度を取り続けたくはない。
私はトーストの乗った皿を手に兄の向かいに座った。意識なんかしていないといわんばかりに。

「職場はどうだ?」

また転職の話をされるのかとつい身構えてしまう。

「今は研修中だから。でも、アットホームな雰囲気だったし、働きやすそう。同期のふたりとも仲良くなれそうだよ」
「天ケ瀬グループに移る気はない、と」
「う、うん」

私は思い切って顔をあげる。
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