義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「あのね、お兄ちゃん。私は本当にもう大人だから、あまり過保護にしないで。仕事のことは心配してくれなくていいよ。身辺には重々気をつけるし、同居だって無理しないで……」
「先日の俺の告白を堂々とスルーしてくれるじゃないか」

くつくつと笑う義兄は、意地悪な余裕たっぷり。傷ついているようには見えない。

「だって、お兄ちゃんは私と距離を取りたがっているように見えた。だから私、金沢の学校に行ったのに。この先も、お父さんやお兄ちゃんに迷惑をかけないように生きていこうと思ったのに」
「おまえを東京から離れさせたのは俺と親父で決めたことだ」
「え……」

私の進学は義父の勧めだけじゃなく、義兄も関わっていたの? それなら、やっぱり私を疎ましく思って遠ざけたかったんじゃない。

「そのうち、詳しく話す。おまえは今のところ、俺に愛されてるってことだけ理解しておけ」

義兄はコーヒーを先に飲み終え、仕度をすべくバスルームに消えてしまった。

七年前、私を遠ざけようとした義兄が、今同じ唇で愛を語る。
どうしてちゃんと話してくれないのだろう。私にはわからないことだらけだ。

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