義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「コーヒー、ここまで運んでくるから待ってて」

淹れたてのコーヒーをマグにそそぎ、ベッドのヘッドボードに置いた。身体を起こした義兄がひと口飲み、ほっと息をつく。

「あらためて、ゆうべはありがとうな。ぼたん」
「ううん……でも間に合ってよかった」

あのまま蘭奈さんと一夜をともにしてしまったら、私たちは今まで通りではいられなかっただろう。気持ち的にも、立場的にも。

「昨日、雄太郎さんがここにきて……」
「そうなのか!? 何もされなかったか?」
「されてないよ。でも勝利宣言みたいに、蘭奈さんの目論見を話すから、慌ててホテルに向かったの。お兄ちゃんが、蘭奈さんとどうにかなるのは心配していなかったけれど、叔母さんたちは責任を取れって結婚に持ち込むんじゃないかって」

私は言葉を切り、義兄を見つめた。

「お兄ちゃん、蘭奈さんに言った言葉は本当です。私はお兄ちゃんには釣り合わない。お母さんにも言われた、住む世界が違うって。だけど、子どもの頃からずっと好きでした」
「ぼたん」
「嫌われたって思って離れても、忘れられなかった。同居だって嬉しかった。無理やりキスされて、ドキドキした。昨日あんなことがあって、蘭奈さんや他の女性にお兄ちゃんを取られたくないって痛感した」

もうごまかせない。気持ちを抑えきれない。
お母さんごめんなさい。私はやっぱり初恋を消せなかった。

「お兄ちゃんが好き。離れたくない」
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