義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「俺はすみれさんが亡くなる少し前に、いずれぼたんを妻にほしいと頼んでいる」

義兄の言葉に私は一瞬言葉を無くした。

「そうだったの?」

私への冷淡な態度がポーズだったというのは聞いた。母とはひっそりと親交を育んでいただろうことも想像できる。
しかし、私への好意まで告げていたなんて。

「すみれさん、笑ってたよ。『ぼたんでいいんですか? 丞一坊ちゃんに釣り合う女性は他にいます』って。本当に母娘で同じことを言う。だから答えた。『ぼたんでなければ、意味がない。これから天ケ瀬の後継者として生きていく中で、隣にいてほしいのはぼたんだけ』って」
「それじゃあ、お母さんは私たちのこと反対なんてしないんだ……」

母に告げてくれた私への気持ち。聞いているだけで、嬉しくて照れくさくて胸がいっぱいになる。
母は義兄の気持ちを知って、安心して最期を迎えたのかもしれない。
母がこの恋を喜ばないかもしれなというのは、私の不安は杞憂だったのだ。

「それでな……、これはおまえときちんと結ばれてから話そうと思ってたんだが」

義兄は私の額にちゅ、とキスを落として続けた。

「親父とすみれさんの結婚自体が、ぼたんのためだったんだ」
「私の……? え……?」

寝耳に水の言葉に私は目を見開き、義兄の顔を覗き込んだ。驚きの連続すぎて、言葉がちゃんと出てこない。
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