義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「よかった。お兄ちゃん、毎日遅いし外食も多いから、ちょっと心配してたの」
「ぼたんが言うから朝食はコーヒーだけをやめて、おまえが用意してくれたものを取るようにしているだろ? ともかく、今日は家だ」
「お野菜たっぷりのメニューにするね。スープとサラダ……あと、お肉かお魚をソテーしようか」
「ありがとう。任せる」

ふたりで夕食を囲むのは先週の外食以来。わくわくとメニューを考え、出勤の準備をした。
仕事は残業にならないように、普段よりペースを速めて進める。仕入れ先とのメールは英語でやりとりすることもあるので、日本語の文章より少し手間がかかる。営業所からの急な対応が今日はないといいと願っているうちに定時がやってきた。よかった、今日はついている。

生鮮食品の買い物ができるスーパーは限られているので、少し遠回りして寄って帰った。
エプロンをして夕食作りスタートだ。
夜、ゆっくりできるなんて本当に久しぶり。丞一はいつも私を気にかけてくれているけれど、彼の方が何倍もの苦労を抱えている。仕事もプライベートも。
私の存在が負担になってはいないだろうかと心配になってしまう。

「そんなことを考えてちゃ駄目だよね」

丞一の隣にいると決めたのだ。妻になると覚悟を決めた。義父と亡き母が賛成してくれるなら、もう怖いものなんてない。私たちを邪魔する人たちになんか負けないし、丞一を信じてついていこう。
今日は美味しい料理で、楽しい夜にするのだ。ふたりで将来について語り合って、明るい気持ちになろう。
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