義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
私が彼と同じ私立の名門小学校ではなく、地元の公立に入学したときは、『なんでぼたんは同じ学校じゃないの?』『ぼたんが心配だから僕が転校する』と社長や母を困らせた。

天ケ瀬丞一は愛情深い“兄”だった。

そんな彼に家族愛とは違う感情を覚え始めたのは、私が9歳ほどの頃だろうか。
学校は違ったし、習い事の多い彼だったけれど、それ以外の時間私たちは一緒に過ごした。
幼い頃からの絆はいっそう深まっていて、私の中に淡い恋が育ち始める。
本当の兄だとは思わずに、一線を引いていたのが、恋心を育てる要因だったかもしれない。
身近にいる憧れの男の子だからこそ、惹かれてしまった。



私の身辺ががらりと変わる事件が起こったのは、中学に上がる年だった。
母が天ヶ瀬社長と再婚すると言い出したのだ。

正直驚いた。娘の目から見て、確かに母と社長は仲が良かった。私や丞一を挟むと余計に家族みたいに見えた。しかし、そこに恋愛感情が育っていたとは……。

母と社長の再婚を祝福しながら、一方で私には不安もあった。社長の妹である松美(まつみ)さん夫妻の存在だ。もともと社長には親戚が多く、天ヶ瀬グループの要職についている者も多い。実妹の原賀(はらが)松美叔母たちもグループでは大きな位置を占める子会社を任されている。

その叔母夫妻が兼ねてより『丞一ひとりが跡取りでは心配』『うちの息子を養子に』と従兄の雄太郎(ゆうたろう)さんを天ケ瀬家の養子に推していたのだ。

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