義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「雄太郎さんや叔母さんの事件で、考えた。お兄ちゃんは、私を大事にしてくれるけど、私のために目が曇ってしまうこともあるように思う。私を守ろうとするあまり、否定する周囲に排他的な行動を取りかねない。それは未来の天ケ瀬のトップとして、あまりに近視眼的だと思う」
「それの何が悪い。家族であり、ずっと愛してきた女を、悪意から守りたいと思うのはいけないことか」
「守られるだけが女の喜びじゃないよ」

私は言い切り、立ち上がった。丞一の横に回りこみ、肩に触れた。

「丞一の隣に並んで立てる方が何倍も幸せ。やりたい仕事に挑んできたいの。そうして、本当の意味で丞一に相応しい女性に成長したい」
「離れることが、お互いのために必要だと言うんだな」

はっきりと頷くと、自然と涙がこぼれてしまった。
本音を言えば、片時だって離れたくはない。
せっかく再会できたのだ。せっかく両想いだと気づけたのだ。
これからふたりで未来を積み重ねていこうと思っていた。

だけど、私は丞一の腕の中で立ち止まっていてはいけない。彼のためにも私のためにも。
丞一が席を立つ。向かい合う格好で、私を抱き寄せた。
< 84 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop