義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
いたずらっぽく笑う丞一の顔は、優しく柔らかく彼なりに照れているのだと伝わってくる。私は小箱を受け取り、喜びと幸福で顔をくしゃくしゃにして頷いた。

「はい。結婚します」
「義兄と義妹じゃなく、夫婦として末永く家族でいよう」
「うん」

立ち上がった丞一が私を抱き寄せる。私はその胸にすっぽりと収まった。
子どもの頃からの想い人。
住む世界が違うとあきらめようとした。嫌われたかもしれないと距離を取った。

だけど、私の気持ちもこの人の気持ちもいつもお互いにあった。再会し、それを確認することができた。
想いを遂げ、今度はお互いのために離れ、今また私たちの道は重なる。
出会ってから今日まで、すべてが大事な時間だった。

「東京に戻ったら、まず親父に報告しよう」
「うん。お母さんのお墓にも報告にいきたい」
「それから結婚式について考えような」

私たちは微笑み合い、未来を語る。
今夜はきっと一晩中だって語明かすだろう。
家族であり義兄妹であり、そして恋人だった私たちは、これから夫婦になる。


(了)



*****



お読みいただきありがとうございました。

2022.4.29 砂川雨路 

※2022.4.30追記
85ページ目が抜けておりました。加筆分ありますのでよろしくお願いします。
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