義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
案の定、母と社長の結婚に大反対したのもこの松美叔母夫妻だった。
母と私が財産目当てで天ケ瀬家にたかっていると声高にののしり、親戚や会社の上層部に触れ回った。

社長の強い希望で再婚は叶ったけれど、叔母夫妻が納得していないのは明らか。
母はこんな環境で大丈夫だろうか。そして、私はどうなるのだろうか。
おめでたいはずの再婚は、スタートから暗雲が立ち込めているように思えた。

そして、改めて家族になった私たちにも大きな問題が生じた。
丞一……義兄の態度が一変したのだ。

それまで家族同然に暮らしてきたというのに、義兄は私と母を避けるようになった。
口にはしなかったけれど、再婚を嫌だと感じていたのかもしれない。もしくは、叔母夫妻や従兄妹たちから私と母に対してあることないこと吹き込まれた可能性もある。

最低限の会話。目すら合わせてもらえない。
天ケ瀬家の集まりや会社のパーティーなどに出席する際は、存在ごと無視されていた。
それまで、どんなときも優しく頼りになった天ケ瀬丞一の豹変は私にとってショックだった。心に芽生えていた淡い恋が痛みとなって、私を傷つける。

さらに追い打ちをかけるように、母の病気が判明したのは再婚からわずか三ヶ月後。
懸命の治療の甲斐なく、二年の闘病の末、母は亡くなった。
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