雨上がりの景色を夢見て
ふと、頭に冷たい水滴が落ちてきた。ポツポツと雨が降り始め、次第に強さを増してきた。

「あら、急がないと」

傘を持っていない夏奈さんが慌ててそう言ったのを聞き、私は持っていた傘をさして、夏奈さんと2人で傘に入った。

「雛ちゃん、ありがとう。準備いいのね」

そう言った夏奈さんはいつもの調子に戻っていて、少し気が楽になった。

夏奈さんは入りきらない分のお花をお墓に立てかけて、お線香を焚いた。

高梨先生には、修二くんが傘をさしている。

不思議な組み合わせに、違和感しか感じない。

貴史のお母さんは、そんな私たちの少し後ろで傘をさして微笑んでいた。








「まさか、夏奈ちゃんと夏樹くんが、雛ちゃんと知り合いだなんて、これも貴史のいたずらかしら」

駐車場に戻りながら、貴史のお母さんは嬉しそうにそう言って笑った。

けれど、お互いの貴史との繋がりが見えない私達は、困惑していた。

でも、きっと1番困っているのは修二くんだと思う。

「…雛さんと、お二人はどのような関係なんですか?」

「自己紹介遅れました。はじめまして、中川先生と同じ職場の高梨と申します」

丁寧に修二くんに挨拶をする高梨先生。修二くんも続けて、自己紹介をした。

「雛さんと貴史さんの高校の後輩の、上田修二といいます。…あれ?高梨先生って…野球部の顧問ですか?」

「ええ…そうですが」

「あー!高梨先生、いつも弟の圭介がお世話になっています」

修二くんの言葉に、圭介くんとの繋がりがあったことを思い出した。

「あら、やっぱり貴史のいたずらかしら。ふふふ」

高梨先生と修二くんを見て、また嬉しそうに貴史のお母さんは微笑んだ。
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