雨上がりの景色を夢見て
「上田くんのお兄さんでしたか！世間は狭いですね」

高梨先生はそう言って、爽やかに笑った。その様子を見ていた夏奈さんも修二くんの方を向いて、

「双子の妹の夏奈です」

と輝くような笑顔で自己紹介をした。

私と同じ傘に入っている夏奈さんは、私だけに聞こえる声で

「修二くんとは仲良いの？」

と尋ねてきた。

「いえ、どちらかと言うと、貴史に懐いてたというか…」

まだ、私と貴史の関係性を説明していないため、どう説明すれば伝わりやすいのか悩んでしまう。

「そうなのね」

夏奈さんはそう言って、私の手から傘を抜き取って、代わりに持ってくれた。

「雛ちゃん、ちょっと足元ふらついてない？」

そう言われて、ドキッとした。

実は朝から微熱があったのだ。それに加え、修二くんのことを言えないくらい私も昨日は寝付けなくて、寝不足だった。

傘をさしているとはいえ、雨に多少濡れて身体が冷えたのも原因だとは思う。さっきから身体も熱くなってきていた。

夏奈さんの冷たい手が、私のおでこに触れる。

あー…バレちゃう。

「大和田さん、雛ちゃん熱あるみたい」

私が言い訳を並べる前に、夏奈さんが貴史のお母さんに声をかけた。

「もうすぐ駐車場だから、車のシートに座ったら様子確認しましょう」




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