雨上がりの景色を夢見て
夏奈さんが車の助手席に座らせてくれた。貴史のお母さんが手際よく私の脈拍を確認した。

「雛ちゃん、我慢強いの昔から変わってないわね」

困った顔でそう言うと、貴史のお母さんは私のおでこに手を当てた。

「風邪だと思うから、薬飲んで安静にしてるのよ。熱下がらなかったらちゃんと病院行ってね」

貴史のお母さんの言葉に頷くと、心配そうに夏奈さんが口を開いた。

「今日は私が家まで送るわ」

そうか、夏奈さんは私の家を知っているんだった。

「…夏奈さん…ごめんなさい」

「いいのいいの。甘えてよ。私、歳上よ?」

いたずらっぽく笑う夏奈さんの様子に安心する。

そうだ…

「おばさん…本当はもう少し話がしたかった」

「今度は、家にいらっしゃい。昔と変わってないから。家の電話番号もそのままよ」

「…はい」

貴史のお母さんの言葉に、私が小さく返事をしたのを確認して、夏奈さんが助手席の扉を閉めた。

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