雨上がりの景色を夢見て
「…んっ…」

ふと、中川先生が寝返りを打ち、俺の手が頬から離れた。

軽くなった手を自分の元へと戻し、ゆっくりと立ち上がる。

まだ手のひらに、中川先生の体温が残っているのを感じながら、そっと部屋を出た。

自分の部屋に入り、パソコンの向かいに座る。椅子に寄りかかったまま天井に向かって手をあげ、見つめる。

「…はぁー…、ほんと、何やってんだよ」

そう呟き、ぎゅっと、固く手のひらを握って拳をつくり、膝の上へ下ろした。

さっきの出来事は、ずっと俺だけの胸の奥に仕舞い込んでおこう。

まだ、引き返せる。

この気持ちは、まだ蓋をしてしまえば、誰にも知られることなく隠し通すことができる。

「…今度こそ、仕事しよ」

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