雨上がりの景色を夢見て
「そういえば、お仕事は、何を…」

「エステシャンよ。オイルトリートメントで、アロマオイルも使うから、アロマセラピーの資格も持っているの」

夏奈さんの答えに納得した。それに、夏奈さんの雰囲気にもとても合っていると感じた。

「それにね、闘病中にアロマの香りに助けられて、すっかりはまっちゃった」

そう明るく言う夏奈さんの言葉に、ドキッとしてしまった。

そうだ…。今はすっかり元気だけど、夏奈さんは病気と闘ってきた時期があるんだ。

「たとえば、雛ちゃんの今の症状だと、マジョラムとかカモミールローマンの香りがおすすめ」

そう言うと、白くて細長い紙にそれぞれアロマオイルをつけて、香りを嗅がせてくれた。

ひとつは、ハーブのようなスパイシーな香り。もうひとつは、フルーティーな香り。ハーブティーのカモミールとはまたちょっと違う印象。

「どちらもリラックス効果が高くて、心身の疲れや風邪症状に効果があると言われてるの。手を出して」

夏奈さんの言葉に、左手を差し出す。

夏奈さんは、すぐ近くの棚に置いてあった小さな入れ物に、透明なオイルを入れ、アロマオイルを数滴垂らした。

「今日は、マジョラム」

そう言って私の腕をまくると、ゆっくりとオイルを私の腕へ馴染ませはじめた。

「あの…」

「ハンドマッサージ。気にしないで、こういうの好きなの」

予告もなしに始まった出来事に戸惑いながらも、マッサージされている腕が気持ち良過ぎて、ハーブの香りに包まれながら心が穏やかになっていく。




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