雨上がりの景色を夢見て
最後にタオルで綺麗にオイルを拭き取ってくれて、マッサージは至福の時間として終わった。

自分の腕ではないような感覚に驚く。

「ありがとうございます。すごい軽くなった…」

「でしょ?手って毎日使うから、気がつかないうちにずっと疲れが溜まっている状態になるのよ」

ふふふっと笑って、立ち上がった夏奈さんは、キッチンで鍋の番人をしていた高梨先生の元へ行った。

ふわっと香るマジョラムの香りが心地よい。

お世話になっているのに、何もしないわけにはいかないと思い、私も立ち上がってキッチンへ近づいた。

「すっかり顔色良くなったね」

私の顔を見て、高梨先生が優しく微笑む。菜箸で、野菜の位置を調節して、空いた隙間にお肉を入れた。

そういえば…

「あの…高梨先生」

「ん?」

お肉を出汁に浸していた高梨先生が手を止めて、私を見る。

「…車から運んでくれたって聞いて…その…本当にすいません…」

言葉にすると、なんて恥ずかしい出来事なんだと実感し、顔がほてるのを感じた。

「ああ…、気にしない、気にしない」

私の様子を察して、そう言って笑顔を見せると、もう一度鍋の方を向いた高梨先生。

そんな高梨先生にほっとして、私もお鍋の中覗いた。

いろいろな種類の野菜や具材が入っていてとても美味しそう。

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