雨上がりの景色を夢見て
「美味しそう…」

「その様子だと、食欲の方も大丈夫そうだね」

私の言葉にそう言うと、火を止めて夏奈さんの方を向いた。

「カセットコンロ出す?」

「そうね、温めながら食べましょう。確か…ここだったかな」

夏奈さんは後ろの棚の扉を開けて、探しはじめた。

「お二人は、喧嘩とかするんですか?」

ふとそんな疑問が浮かんできて、自然と口にしていた。

「喧嘩?するよ。結構どうでもいいことで」

そう言って、高梨先生は苦笑いをして、カセットコンロを探している夏奈さんの様子を伺った。

「あれー?ここにしまっておいたはずなんだけど…」

視線に気が付かず、ゴソゴソと探す夏奈さん。

「お互い、自分のこだわりは強いけど、ルーズなところもあって。楽しみにしていた食べ物をお互い無断で食べて、喧嘩になったり。結局お互い様なんだけどね」

高梨先生のそう言った時の表情はとても柔らかいものだった。

「仲が良いからこそって感じですね」

「そう思ってもらえてるならよかった」

ふわっと笑った高梨先生は、今まで見たことのない優しいだけでは表せないくらい幸せそうな笑顔で、私の心に中まで温かくなる。








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