雨上がりの景色を夢見て
今の時刻は、23時過ぎ。

やっぱり、無理を言ってでも家に帰った方がよかったかな、と思っている。

日中、熱があったとはいえ、寝過ぎてしまい全く眠くならない。ベットの横では、布団を敷いて夏奈さんが熟睡している。

お手洗い借りよう。

夜ご飯の天然水がとても美味しくて、多めに飲んでしまったためだと思う。

枕元のスマホを手に取り、ライトを照らして、部屋をそっと出た。

あれ…?

お手洗いから出て、部屋に戻ろうとした時、リビングから明かりが漏れていることに気が付き、自然と足が向かっていた。

そっと扉を開けて、中を見ると、もちろん、リビングのソファーに座っていたのは高梨先生で、薄暗い中洋画を観ていた。

英語の字幕と、英語の音声で、私には内容がよくわからないけれど、英語の先生だけあって、集中して見入っている。

邪魔をしないように、ゆっくりと静かに扉を閉めかけた時、

「中川先生?」

気配に気がついた高梨先生が声をかけた。

「…寝れなかった?」

高梨先生の言葉に小さく頷く。高梨先生はテレビを消して、立ち上がると、電気をすっかり明るくし、冷蔵庫から缶ビールを2本出した。

「よかったら、時間潰しにでも」

そう言って、私に缶ビールを一本差し出す。けれど、すぐに、

「お酒勧めたら、夏奈に怒られるかな。えっと…お茶飲む?」

と、迷いながら聞いてきた。

私はすっかり体調が良くなったと自分でも感じていたため、差し出された缶ビールを受け取った。

それに、少し眠たくなった方がいい。

「自己責任ということで」

「そういうことで、お願いします」

私の言葉に、高梨先生は冗談混じりにそう言った。


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