雨上がりの景色を夢見て
ビールを飲みながら、高梨先生の様子を伺う。

夜ご飯の時と合わせると、缶ビール5本ほどは飲んでいる。けれど、ちっとも酔っている様子がなく、いつもと全然変わらない。

お酒、強いんだ…。

ふと、高梨先生の家で、こうやってお酒を飲んでいる状況は、冷静に考えると同じ職場の人に知られたら誤解を招いてしまうのではないか、と思った。

夏奈さんしか知らないことだから、他に知られることはないけれど、理由がなんであれ、知られないようにしよう、と心の中で決める。

やっぱり、一緒にお酒を飲むことは、軽率な行動だったかな、と考え込んでしまう。

「中川先生は…今は何を考えてる?」

「えっ…?」

私の心の中が見えているような、高梨先生の言葉に、ドキッとして俯きかけていた顔を上げる。

高梨先生と目が合うと、困った表情で、苦笑いをしていた。

「最近、プライベートで遭遇した時に気がついたけど…、中川先生は結構顔に出るね」

そう言った高梨先生は、心配そうな、だけど見守るような優しい目で私を見つめる。反応に戸惑いながも高梨先生の視線から逃れることができない。

「…似てる…。昔の夏奈に」

その言葉に、高梨先生は、妹のような目線で私を見ているのだと確信した。けれど、実際は妹ではないのだから、きっと同情なのだと思う。

おそらく、私と貴史の関係性に気がついているから、気にかけてくれているのだ。



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