雨上がりの景色を夢見て
「大学生の時、ミスコンとか出なかった?」

夏奈さんの言葉に、首を横に振る。

「きらきら輝いてる子いっぱいいました。それに、私自身そんなガラじゃないですし…」

実行委員の人に、毎年遠慮気味に声はかけられていたけれど、私の性格上、断られること前提で声をかけにきていた感じはあった。

それに、ミスコンで表舞台に立つ人たちは、みんな素敵な笑顔で、眩しいくらい輝いていて、私はそんな中に並ぶ勇気なんて出なかった。

「夏奈さんは、夏奈さんこそミスコン出てそう…」

私の言葉に、ふふっと微笑む夏奈さんに、やっぱりこんなにオーラがあるから出ていて当たり前、と思った。

「何と、ミスコン3連覇。1年生の時は垢抜けてなかったから、準グランプリ止まりだったのよね。悔しくて、自分を磨いたわ」

さすが、夏奈さん。私は「すごい…」としか言えなかった。

「あら、こんな時間。そろそろ行きましょう」

夏奈さんは、そう言って、鞄を持って玄関に向かう。私は、夏奈さんが貸してくれた新しい夏用のサンダルを履いて、夏奈さんに続いた。

「暑い…」

マンションのエレベーターを待つ間でさえ、もうすでに暑くて、夏がすっかりすぐそこまで来ているのだと実感する。

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