雨上がりの景色を夢見て
「詳しくは聞いていないから、心配しないで」

そんな私の心境を察したのか、夏奈さんはそう言って、穏やかな表情を一瞬私に向けた。

「…ただね、夏樹をフォローするわけではないけど…」

前を向き直して話すを続ける夏奈さん。

「結構、不器用なのよ、夏樹。雛ちゃんのこと、特別だと思ってるからこそ、ね」

〝特別〟という言葉に、私は夏奈さんの横顔を見た。同時に、昨日、高梨先生が私を夏奈さんに似ていると言ったことを思い出す。

「…妹みたいだって思ってるんですよね。そんな感じはします」

親身になって話を聞いてくれたのも、優しくしてくれたのも、妹である夏奈さんに似ているから。

面倒見も良い高梨先生らしいと思った。

「…夏樹…大変ね」

何か呟いた夏奈さんだったけれど、ちょうどダンプカーとすれ違い、声がよく聞こえなかった。



< 156 / 538 >

この作品をシェア

pagetop