雨上がりの景色を夢見て
「終わりました？」

あっ…

優しく微笑んだ高梨先生の雰囲気は、敬語ではあるけれど、プライベートで話をしていた時と同じで、急にそんな姿を見たため、驚いてしまった。

「はい…」

私の返事に、高梨先生も帰りの支度を始める。

「お仕事、まだ途中ではないですか…？」

「ああ、大丈夫です。急ぎのものではないので」

高梨先生は、そう答えると立ち上がり、カバンを持った。

手分けをして、職員室内の戸締りを済ませる。最後に電気を消して、職員玄関に向かい廊下を歩き始めると、高梨先生がスマホを取り出してライトを照らした。

私は不思議に思った。

まだ薄暗いため、足元は見える。私のように暗闇が苦手ではなければ、ライトは必要ないし、普段外で遅くまで部活指導をしている高梨先生が暗闇が苦手だとは思えない。

「高梨先生…もしかして、私が暗い所が苦手って気が付いてました…？」

「はい。中川先生が帰る時にスマホのライトで照らしてる姿何度も見かけてましたから」

少し前を歩く高梨先生の顔は、よく見えないけれど、穏やかな声から、きっと優しい表情をしているのだと思った。






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