雨上がりの景色を夢見て
「…ありがとうございます」

「いいえ、たいしたことしてないですよ」

謙遜した高梨先生だけど、私にとって、何も話していないのに、さりげなくそうしてくれたことが、驚きと同時に、素直に嬉しかった。

そして、何気なく見かけていた光景から、このような配慮を当たり前のようにできてしまう高梨先生は、やっぱりすごい人だと思う。

そんな事を考えていると、あっという間に玄関に着いた。セキリュティをかけて職員玄関の戸締りを確認し、校舎を出る。

「妹さんはいくつになるんですか？」

「9歳です」

高梨先生が、菜子の年齢に少し驚いた様子を見せたけれど、すぐに笑顔に変わった。

「小3？ですね。海で会った時、中川先生にそっくりだなって思いました」

そういえば、高梨先生と夏奈さんは菜子と会っていたんだ。あの時の菜子の夏奈さんへの眼差しを思い出して、思わず笑ってしまった。

「私と妹は母似なんです」

そして、菜子の性格は、どちらかといえば仁さん似。人懐っこくて、あまり細かいことは気にしない。だからこそ、仁さんと私の関係が上手くいっているのだと思う。


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