雨上がりの景色を夢見て
「菜子の反抗期の時に使うらしいわ。そもそも、反抗期だからお願い聞いてくれなそうだけどね」

母の言葉に、仁さんの考えそうな事だな、と思えて、私も笑ってしまった。

面と向かって、怒れない性格だからこそ、仁さんが一つの手段としてとっておこうと思った気持ちが分かる。

ふと、仁さんは私に対して、母との結婚の許可をもらう時以外で、何かお願い事をしたことがあっただろうか、と思った。

きっと、遠慮しているんだ…。

私の父となり、そして家族となったとはいえ、すでに高校生だった私にあれこれ言いにくかったことは理解している。

でも…

私は近くのペン立てから、ペンを1本手に取り、電話横のメモを1枚破いた。

私が作ったのは、2枚の〝何でもお願いできる券〟だった。

菜子のものと重ねて元の場所にそっと戻した。

「雛、ありがとう」

一連の流れを見ていた母は、私にそう言って微笑んだ。

何かの時に、言い出しにくい時に、役に立てばいいな、と思った。






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