雨上がりの景色を夢見て
メールに添付されていた画像は、見たことのない雰囲気の、中川先生の写真。

タイトなブールのワンピースをまとった中川先生は、いつも以上に大人っぽくて、本人には口が裂けても言えないけれど、色気のある雰囲気だ。

このワンピース、夏奈のか…?髪型も、多分、夏奈だろう。髪いじるの好きだもんな。

中川先生の、恥ずかしそうに笑った表情が、俺の心臓の鼓動を速くする。

夏奈、俺の反応楽しむために、わざと送ったな…。

そう思い、スマホの画面を閉じて、サンドイッチにかぶり付いた。

夏奈が一緒だから大丈夫だろうけど、あんな格好で、街中を歩いて大丈夫なのだろうか。怪しい人に声をかけられたりしないだろうか。

そんな心配がよぎったのと同時に、俺は自分の中のモヤモヤする気持ちに気がついた。

これは、今まで感じたことのない気持ちだ。

独占欲…。

今までいた彼女に対しても抱いたことのない、独り占めしたいと想う気持ちに、俺自身が1番驚いた。

中川先生の気持ちは、貴史くんのものとなったまま、時が止まっている。困った事に、手の届かないところにいる貴史くんには、この先も絶対に敵わない。

せめて、目の前の彼女に触れることは許してほしい。けれど、他の人には触れてほしくない。そういう目で見てほしくないのだ。

矛盾だらけだ。

はぁ-…

三十代後半に突入しているいい大人が、こんなことを思っていいのだろうか。




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