雨上がりの景色を夢見て
信号待ちになり、車を止め、あの日の朝の夏奈の言葉を思い出す。

〝私のこと、理由にするのなし〟

あの言葉を言われた瞬間、夏奈に先手を打たれてしまった、と思った。

夏奈の言葉を受け止めて、俺の感情だけを優先するなら、もう答えは出ている。

忘れかけていた、恋愛に対しての駆け引きを思い出し、彼女と距離を縮めることを試みていく。

けれど…

それは、夏奈にとっては幸せなのか?

俺は、夏奈を孤独にしてしまうのが怖い。

今日だって、押し潰されそうな不安や恐怖心に耐え、明日の検査をむかえる夏奈。

何かあってからでは、遅い。

青信号に変わり、車を走らせる。

今頃、考え込んでしまっているんだろうな…。

ハンドルを握りしめる手に、力をぎゅっと入れた。








家に帰ると、まだ20時だというのに、リビングは薄暗くなっていた。

テーブルの上に用意された俺の分の夜ご飯の隣に、夏奈の整った字でメモが残されていた。

『夏樹、おかえりなさい。
やっぱり色々考えちゃうから、先に寝るね。明日は、よろしく。』

飲み会に行かなくて、良かった、と心の底から思った。

部屋着に着替え、夏奈の部屋をノックして、そっと扉を開けた。



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