雨上がりの景色を夢見て
残ると言った私に、母は一つの条件をつけた。

どちらかが家庭をもつまで、夏樹と二人暮らしを続けること。

すぐに頼れる人がすぐそばにいる環境を維持することが条件だった。

きっと、私の性格を理解している母だからこそ、厳しい条件をつけたのだと思う。

そして、夏樹も母の考えに賛同し、こっそり一人暮らしをしようとしていた私の計画を阻止した。

当時は、もう大丈夫なのに大袈裟、と思って生活していたけれど、再発が分かった時に、夏樹がすぐ近くにいてくれて気持ちが救われたのは事実だった。

私は夏樹に甘え過ぎてきた。一言だけで、大体のことを理解してくれる双子の兄の優しさに、頼りすぎていたのだ。

言葉では、

「大丈夫」「シスコン」「過保護」

と言っているけれど、兄離れできていないのは、私なのだと思う。

それが分かるからこそ、兄離れするきっかけが欲しかった。そんな時に出会ったのが雛ちゃん。

見た目だけではなく、中身も、夏樹の好みそのものだと直感的に感じた。

そんな雛ちゃんが、まさか大和田さんと繋がりがあったということが、理由がなんであれ、運命的なものだと思った。

「夏奈、呼ばれた」

夏樹の言葉にはっとして、カバンを持って立ち上がる。

「行こう」

夏樹が前を歩き、診察室の扉を開けてくれて、私を中へ入るように促した。



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